AGカウンセリングオフィス | 日記 | 今どきの「父親役割」と「母親役割」

心理学の分野では，子どもに関するものや家族に関する研究が数多くあります。その中でも，最近増えてきたなと感じる研究テーマに，「父親」に関するものがあります。

日本でも，この半世紀の間に，「父親」のあり方は大きく変化してきたように思います。日本の高度成長期の頃のほとんどの家庭は，「男は外で働き，女は家で家事育児をする」といった性別役割が社会の風潮として暗黙のうちに機能していましたが，バブル崩壊のあとの近代においては，男性，特に「父親」のあり方に変化が見られるようになりました。最近では，「育メン」という言葉もよく耳にしますね。

「父親」である夫が家事育児に関わるようになってきたことを，妻（母親）はどう感じているのでしょうか？

最近のメンタル相談（育児相談を含む）の中で，育児に悩んでいるママの声として，こんな言葉がよく聞かれます。「夫のことを出産前のように好きになれない」「夫に関心がない」「心が通い合わない」など…。

このように，出産後に夫婦仲が悪化し，特に妻から夫への感情が急激に悪化する現象を「産後クライシス」といいます。ある調査（ベネッセ）によると，288組の夫婦での調査において，妻の夫への愛情は74.3％（妊娠期）から34.0％（2歳児）にまで低下し，子どもが0歳，1歳，2歳となるにつれて愛情は低下するという結果が見られました。

また，180人のママを対象にした調査（ママこえ）では，愛情が減ったという理由に，以下のようなものを挙げています。

・子ども優先で，夫にかまっていられない
・子どもに関心が向いたから
・生活が子ども中心だから
・スキンシップがなくなった
・夫は空気のような存在になった
・夫にくっつかれることが嫌なときがある


一方で，「愛情が増した」「変わらない」というママたちもいて，その理由として以下を挙げています。

・自分の子どもに対して100％同じように感情をシェアできるのは夫だから
・子どものためにも夫を大切にしようと思う
・家事・育児をかなり手伝ってくれる
・家事・育児に旦那が積極的だから
・色々手伝ってくれて，不安を受け止めてくれるから
・子どもと一生懸命に遊ぼうとしてくれている


やはり，夫（父親）が家事・育児に積極的に関わってくれる夫婦ほど，「家族」という絆が次第に強まって，お互いの愛情を感じられやすいというように見受けられます。「育メン」という言葉の背景には，そういった理由があったのかもしれませんね。


もうひとつ，「父親役割」に関する面白い研究がいくつかあります。

・2008年，オハイオ州立大学
「父親の育児のやり方に対して母親が批判的な態度を取る家庭では，父親の家事・育児関与率は低い。逆に，母親が父親に相談を持ちかけたり父親の子育てに積極的な家庭では，父親が子どもにかかわる割合は高い」

・2000年，ニューファンランド記念大学
「妻が妊娠中の父親のプロラクチン（母親の母乳の分泌に関するホルモン。性欲を抑制し，子どもに献身的に接するような働きをする）の血中濃度が上昇する」
→これにより，男性の攻撃性が弱まり，より子どもに優しくかかわるようになる。
※父親だって，育児をする準備が生理的に整ってくるんですね！

・2006年，ニューサウスウェールズ大学
「生後8週目までに赤ちゃんは父親と母親の行動パターンに気づいている。母親に抱き上げられた赤ちゃんはおとなしくなり，心拍数と呼吸数が減少する。父親に抱き上げられると，心拍数と呼吸数が上がる」
→これは，子どもが父親に，はしゃぐ遊びを期待している証拠だそうです。

・2006年，ノースカロライナ大学
「3歳までの言葉の発達は，母親の言葉より父親の言葉の影響を受ける」
→赤ちゃんになじみやすい，わかりやすい言葉で話しかける母親の言葉（ポンポン痛いのかな～？まんまでチュよ～など（笑））とは違い，父親の話しかける言葉は赤ちゃんにとっては難しい言葉ではあるけれど，それがよい意味で赤ちゃんの言語能力を刺激して言語能力を伸ばしていくそうです。


いずれにしても，争いからは愛は生まれない，愛は愛の中で生まれて育まれる，ということですか。そうはいっても，なかなか頼る人がいない孤独な子育てをしているママやパパも多いようです。

私のオフィスでも，メールでの子育て相談も始めました。自分の中での「気がかり」を吐き出してみる。そうすることで，また前に進めるようになるかもしれません。お気軽にご利用いただければと思います。

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